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学会誌

日本がん看護学会誌の論文投稿に関する不正行為防止のためのガイドライン

宣言

本学会の会員および本学会誌に投稿する者は、投稿に関する不正行為および不適切な行為を行ってはならない。

1. 目的および趣旨

一般社団法人日本がん看護学会(以下、「本学会」という。)は、本学会が発行する日本がん看護学会誌(以下、「本学会誌」という。)への不正な論文投稿を未然に防ぎ、本誌の学術性と健全性、社会からの信頼性を確保することを目的として、論文投稿に関する不正行為防止のためのガイドラインを以下のとおり定める。
本ガイドラインは、本学会の会員および本学会誌に投稿する者に対し、①投稿に関する不正行為を未然に防ぐこと(不正行為の抑止をはかること)、②不正行為が判明した場合に適切な対応を図ること、を目的とし、研究者等の倫理的規範1,2)に基づき、本学会へ投稿する者が留意すべき事項および本ガイドラインの運用について示すものである。
なお、本ガイドラインの運用にあたって、個別的な判断は編集委員会に委ねるが、投稿者との意見の相違などが生じた場合は、理事会において対応する。

2. 投稿に関する不正行為の定義

本学会は、本学会誌への投稿に関する不正行為として、特定不正行為3)である「捏造」、「改ざん」および「盗用」を定義する。また、不適切な行為として、「二重投稿」「分割投稿」、「不適切な著者資格による投稿」「その他の不適切な行為」を位置付ける。

  1. 不正行為
    1. 捏造:存在しないデータ、研究結果等を作成すること3)をいう。
    2. 改ざん:研究資料・機器・過程を変更する操作を行い、データ、研究活動によって得られた結果等を真正でないものに加工すること3)をいう。
    3. 盗用:他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究結果、論文または用語を、当該研究者の了解もしくは適切な表示なく流用すること3)をいう。
  2. 不適切な行為
    1. 二重投稿:印刷物、電子出版物を問わず、既に出版された、ないし、他の学術雑誌に投稿中の論文と本質的に同一の原稿をオリジナル論文として投稿する行為4,5)をいう。
      以下のいずれかに該当する場合には、二重投稿とみなす。
      1. ① 本学会誌に投稿した論文を、筆頭著者または共著者として他の学術誌に投稿すること
      2. ② 既発表の論文との差異が明確に記述されていない新たな論文を、筆頭著者または共著者として本学会誌に投稿すること
      3. ③ ある言語で発表した論文を他の言語に翻訳し、筆頭著者または共著者として本学会誌に投稿すること。

      ただし、以下の場合は、二重投稿とはみなさないが、その旨を付記すること。

      1. ⅰ) 大学の学士論文・修士論文・博士論文(既に機関リポジトリに全文を公開している論文は除く)
      2. ⅱ) 科学研究費補助金報告書、事業報告書、学会等の学術講演、学会・研究会の抄録集に発表した研究
    2. 分割投稿(サラミ投稿)6):1つの論文で発表可能な研究を分割し、同じ研究データを用いて複数の研究結果を報告することである。研究者が論文数を増やす方法として、広く認識されている行為である。
    3. 不適切な著者資格(オーサーシップ)による投稿:著者となることができる要件を満たさない者を著者として記載すること、著者として要件を満たすものを故意に著者として記載しないこと、又は当人の承諾なしに著者に加えることをいう7)

      *「日本がん看護学会誌」投稿規程
      1.著者資格(Authorship)

      「論文の著者資格を有するのは,投稿された論文の研究において重要な知的貢献を果たした者をいう.すなわち,①研究テーマの着想,研究計画,データ収集,データの分析,解釈に実質的にかかわり,且つ,②論文の作成・校閲に関与し,論文の内容に責任が負える者である.」

      不適切なオーサーシップの例
      1. ① ギフト・オーサー:著者として研究に対する十分な貢献がない(著者資格がない)にもかかわらず著者に名前を列記すること。
      2. ② ゴースト・オーサー:研究および論文作成に相当の貢献をしている(著者資格がある)にもかかわらず、意図的に著者から除外すること。利益相反を隠ぺいする目的で行われることもある。
      3. ③ ゲスト・オーサー:明確な貢献はないが、論文出版の可能性を高めるために年長者や知名度のある研究者を著者に列記すること。
    4. その他の不適切な行為
      1. ① 文部科学省・厚生労働省「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」8)等に反する行為を行うこと
      2. ② 著作権を侵害すること
        ・既存の尺度、介入プログラム、アルゴリズム等を、著作権を有する者への使用許諾なく使用したり、改変したり、自身の論文に転載したりすること。
      3. ③ データの二次利用であることを記載しないこと
        ・データを二次利用する場合、そのことを表示しない、また二次利用の根拠を明確に示さないこと。
      4. ④ 当該論文の内容の一部を公表していることを記載しないこと
        ・すでに学術集会等での発表や、学位論文、報告書において、投稿論文の内容の一部もしくは概要を公表していることを、論文中に表示しないこと。
      5. ⑤ 資金の助成を受けていることを記載しないこと
        ・研究の実施において、資金の助成を受けているにもかかわらず、それを論文中に表示しないこと(利益相反の有無にかかわらない)。

3. 本ガイドラインの適用対象

本ガイドラインの適用対象は、本学会誌に投稿された論文とする。本ガイドライン制定以前に投稿され、すでに本学会誌に掲載された論文においても、明らかな不正行為やその疑いなどが判明した場合、本ガイドラインの適用対象とする。

4. 不正行為および不適切な行為の疑義が生じた場合の対応

本学会誌に投稿された論文、およびすでに本学会誌に掲載された論文における不正行為および不適切な行為に関する対応は以下の通りとする。

  1. 投稿論文の場合
    1. 論文投稿に際し、著者に本ガイドラインを遵守する旨の誓約書の提出を求める。また論文の査読に際し、査読者に本ガイドラインの活用を依頼する。
    2. 編集委員長は、投稿論文に対して不正行為あるいは不適切な行為やその疑いが生じた場合は、編集委員と協議の上で著者に回答を求め、受付するか否かを判断する。
    3. 投稿受付から査読のプロセスにおいて、不正行為あるいは不適切な行為のある投稿論 文であるとの疑義の指摘があった場合は、編集委員長と担当編集委員が協議の上、著者に回答を求める。
    4. 著者の回答をもとに編集委員会で協議する。
    5. 協議の結果、不正行為あるいは不適切な行為がないと判明した場合には、ただちに著者に連絡するとともに、論文の査読を再開する。投稿論文に不正行為あるいは不適切な行為があると判明した場合には、編集委員会の協議結果について理事会で審議する。
    6. 理事会での審議の結果、不正行為あるいは不適切な行為に該当することを確認した場合には、投稿論文の受付を取り消し、理事長名にて著者に投稿論文の受付取り消しを通知する。
  2. 掲載論文の場合
    1. 第三者(以下 指摘者)より不正行為あるいは不適切な行為のある論文であるとの疑義の指摘があった場合、編集委員長は理事長および編集委員会に意見聴取の必要性等を諮った上で、当該論文の著者ならびに指摘者に対し、理事の中から2名を加えて3名で個別の意見聴取を行う。その結果をもって、理事会で指摘事項の正当性について審議する。
    2. 理事会での審議の結果、不正行為あるいは不適切な行為に該当するとことを確認した場合は、当該論文の掲載を取り消し、理事長名にて著者に当該論文の掲載取り消しを通知する。

5. 不服申立て

本学会誌の投稿に関する不正行為あるいは不適切な行為の被対象者(著者)は、不服申立てをすることができる。

  1. 不正行為あるいは不適切な行為の被対象者(著者)は、投稿論文の受付取り消し又は当該論文の掲載取り消しの決定を受け、かかる決定に不服がある場合は、理事長名での通知書に記載された日付の翌日から14日以内に、所定の様式の不服申立書を理事長に提出する形で、不服申立てをすることができる。
  2. 理事長および編集委員長は、著者からなされた不服申立について、内容・理由等を勘案し、再審議の必要性を速やかに判断する。
  3. 理事長および編集委員長にて再審議が必要と判断された場合は、理事会にて、不正行為あるいは不適切な行為の被対象者(著者)の不服申し立ての内容・理由等を踏まえ、不正行為あるいは不適切な行為に該当するか否かについて改めて審議する。

6. 守秘義務について

本学会誌に投稿された論文、およびすでに本学会誌に掲載された論文における不正行為あるいは不適切な行為への対応に携わる者は、これらの行為に関連したすべての事項について知りえた情報を他に漏らしてはならない。

引用文献

  1. 日本学術会議.声明 科学者の行動規範-改訂版-. 2013, 5-7
  2. 医学雑誌編集者国際委員会. 生物医学雑誌への統一投稿規定:生物医学研究論文の執筆および編集(2010年4月改訂版). 2010, 3-14
  3. 文部科学大臣.研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン. 2014, 10
  4. 日本学術会議.回答 科学研究における健全性の向上について. 2015, 3
  5. 研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会. 研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会報告書. 2012, 1-2
  6. 日本学術振興会「科学の健全な発展のために」編集委員会 編. 科学の健全な発展のために-誠実な科学者の心得-. 東京, 丸善出版, 2015, 70
  7. International Committee of Medical Journal Editors. Defining the Role of Authors and Contributors. 2018-12.
    http://www.icmje.org/recommendations/browse/roles-and-responsibilities/defining-the-role-of-authors-and-contributors.html
    (参照2020-1-10)
  8. 文部科学省・厚生労働省. 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針. 2017, 1-39

参考文献

  1. 日本学術会議 学術と社会常置委員会. 科学におけるミスコンダクトの現状と対策:科学者コミュニティの自律に向けて. 東京, 日本学術会議学術と社会常置委員会, 2005,1-49
  2. 医学雑誌編集者国際委員会. 生物医学雑誌への統一投稿規定:生物医学研究論文の執筆および編集 (2010年4月改訂版). 2010, 1-28
  3. 科学技術・学術審議会 研究活動の不正行為に関する特別委員会. 研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて-研究活動の不正行為に関する特別委員会報告書-. 2006, 1-55
  4. 医学雑誌編集者国際委員会. 医学雑誌掲載のための学術研究の実施、報告、編集、および出版に関する勧告 (2017年12月改訂版) 日本語翻訳版. 2017, 1-29
  5. 米国科学アカデミー編 (池内了 訳). 科学者をめざす君たちへ 科学者の責任ある行動とは. 第3版. 京都, 化学同人, 2010, 1-82
  6. Steneck NH (山崎茂明 訳). ORI 研究倫理入門-責任ある研究者になるために. 東京, 丸善出版, 2005, 1-163
  7. 日本学術会議 科学研究における健全性の向上に関する検討委員会. 提言 研究活動における不正の防止策と事後措置 -科学の健全性向上のために-. 2013, 1-12
  8. Grove SK, Burns N, Gray JR (黒田裕子他 監訳). バーンズ&グローブ 看護研究入門 評価・統合・エビデンスの生成. 原著第7版. 東京, 医学書院, 2015, 169-171
  9. Steneck NH. Fostering Integrity in Research: Definitions, Current Knowledge, and Future Directions. Science and Engineering Ethics.12, 2006, 53-74
  10. 国際看護師協会 (日本看護協会訳). 看護研究のための倫理指針. 2003, 1-19
  11. Roig M. Avoiding plagiarism, self-plagiarism, and other questionable writing practices: A guide to ethical writing. 2015.
    https://ori.hhs.gov/content/avoiding-plagiarism-self-plagiaristtl01nd-other-questionable-writing-practices-guide-ethical-writing
    (参照2020-1-10)

付記

この規程は令和2年2月21日から施行する。