日本がん看護学会はたばこのない2020日本のプロジェクトに参加しています

学会概要

理事長あいさつ

この度、理事長を拝命しました鈴木久美と申します。これまで歴代のすばらしい理事長のリーダーシップのもと多くのことが成し遂げられてきました。これらの功績を引き継ぎ、日本がん看護学会のさらなる発展をめざして尽力してまいりたいと思います。

 本学会は、わが国ではじめてがんが死因第1位になった数年後の1987年に設立され、「がん看護に関する研究、教育、実践の発展と向上に努め、もって人々の健康と福祉に貢献すること」という目的のもと長年にわたり活動してまいりました。そして、2013年に法人化され、今年の2月で10年を迎え、看護実践を大切にするという伝統を礎に日本のがん看護を牽引する学術団体へと成長いたしました。5,300人を超える会員を擁する本学会は、臨床に所属している看護師が多くを占めているということが大きな特徴です。

 近年、ビッグデータやAIを活用したがんゲノム医療による個別化治療や低侵襲性手術、重粒子線治療などがんの診断や治療技術の向上はめざましく、がんサバイバーの5年相対生存率は60%を超えました。一方で、がんサバイバーはがんと診断されたときから長期にわたり、治療による副作用や晩期障害などの身体的問題、再発・転移への恐れといった精神的問題、就労や人間関係などの社会的問題、高額な治療費に伴う経済的問題といったさまざまな問題に直面しています。そのため、がんサバイバーやご家族が求めるニーズも多様化・複雑化しています。特にこの3年間は新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより社会活動や医療は多大な影響を受け、がん医療のパラダイムシフトも生じています。このような状況のなかで、本学会はがんサバイバーとそのご家族が住み慣れた地域で安心して、がんとともに自分らしく生活できるよう患者本位の医療を提供することをめざして活動しております。

 本学会の主な事業としましては、がん対策基本法に基づいたがん対策推進基本計画の分野別施策である「がんの予防」「がん医療の充実」「がんとの共生」をもとに、①学術集会の開催、②学会誌発行、③看護専門職の実践及び研究の質向上、④国内外の関連学術団体との連携、⑤国際交流活動、⑥人々の健康と福祉に貢献するための社会活動などを行っております。2018~2020年度には「グローバルブリッジ・ジャパン・プロジェクト」に採択されたプログラム『禁煙教育に係る日本のオンコロジーナースの能力向上のための取り組み』を国際がん看護学会(International Society of Nurses in Cancer : ISNCC)とアジアがん看護学会(Asian Oncology Nursing Society : AONS)とともに研究に取り組みました。今後も世界のがん看護学会と連携し、がん看護実践の質向上などに貢献してまいりたいと思います。また、2019年度と2023年度には、日本臨床腫瘍学会と日本臨床腫瘍薬学会と共同して「がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン2019年版」と「がん薬物療法に伴う血管外漏出に関する合同ガイドライン2023年版 第3版」を刊行いたしました。これからも関連学会との連携を密にしてがん医療にも広く貢献できるよう努力していく所存です。さらに2020年度は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴い災害対策委員会を発足し、実態調査や看護実践の手引きの作成、ホームページへの「新型コロナウイルス関連情報特設ページ」の開設など、災害時に役立つ情報発信にも努めてまいりました。

 2021~2022年度の理事会では将来構想推進委員会を設置し、本学会の将来像を描きながら、学会活動の方向性や委員会組織などさまざまな検討を重ねてまいりました。今期理事会はその検討を踏まえてこれまでの理事会の方針をしっかりと継承しつつ、新しい組織体制で活動し、会員のみなさまへ意味のある還元ができるよう尽力してまいる所存です。一意専心、理事・監事の方々と力を合わせて学会運営を務めさせていただきますので、会員のみなさまやがん看護に携わっていらっしゃる看護師職のみなさまのご理解とご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。

2023年3月
一般社団法人日本がん看護学会
理事長 鈴木 久美